柳川たみ

絵と詩を書いています。「無文芸」という詩の冊子を作っています。

王将(1948)

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昔の、古い日本が見たくなって、見ました。

日本といっても、私は生まれてから以降の日本しか知らないから、日本のことがわからないので、昔の日本のことをもっと知りたいと思います。

明治時代の天王寺の風景が、地獄のようで、その貧民窟に住んでいる坂田三吉の家族。

将棋に夢中で働くことができない三吉と、それを支える奥さん。「妙見さま」という菩薩様への信心が、家族を支えている。苦しい時に、「南無妙法蓮華経」と唱えながら必死に太鼓をたたく様が、真っすぐで美しく感じた。こんな信仰を昔の人はごく普通にもっていたのだと思う。

とてもよい映画を見たと思いました。

 

ちなみに、坂田三吉の映画は別のものも見たことがあって、1991年につくられた『王手』という、阪本順治監督の映画で、こちらは、坂田三吉役は若山富三郎だが、坂田三吉の亡霊のような役柄で、赤井英和大阪・新世界に住む真剣師の飛田という人物で主人公で、現代の坂田三吉のような役である。これも、私はわりに好きな映画でしたが、まあまあです。

セレブリティ (1998) CELEBRITY 監督 ウディ・アレン

小説家志望の脚本家で、中年の、がんばっているが煩悩の多そうな、女性関係にだらしないような男性が主人公の映画。最後まで何か画期的なことがあることもなくたんたんと、ニューヨークでの、華やかだがただれているような倦怠感のある日々が描かれているが、常に、よく描きこまれているドローイングのような濃密な画面であり、飽きない。セレブがカメオ出演的に少しずつ出てくる。若くて輝いているレオナルド・ディカプリオや、20年くらい前のドナルド・トランプ氏もちょっとだけ出演している。何も起きないのに、見ごたえのある映画でした。

女神の見えざる手 (2016) MISS SLOANE 監督ジョン・マッデン

彦坂先生にすすめていただいた映画です。

とても冷徹で、目的のための手段を選ばない、女性の敏腕ロビイストの話です。

おもしろかったのが、このロビイストが銃規制派を陰で動かすために活動する資金集めで、著名なフェミニストに会いに行くのですが、「私はフェミニズムには興味ありません」と苦笑いしながら言うのです。そのフェミニストは「そうね、あなたにないのはペニスだけ。」と答える。

狂ったように仕事をし、結婚はせず、性欲やストレスを男娼を買うことで和らげる。
(のちに、彼女が裁かれる裁判で、その男娼が証人として召喚されたときに、男娼は、男なのに体を売っているのですね、のような言葉で裁判官に侮辱されるような場面もあった。)

主人公は、女性とか男性とかというよりも、ただやりたいことをやっているだけなのですね。

ただ、いつも何かのクスリをのんでいて、ずっと眠らずに仕事をしています。そのあたりが、女性ということで受けている重圧をもしかしたら表現しているのかもしれないし、単にワーカホリックであることの表現なのかもしれませんが。。

女性が男性と同様に働くということについて考えさせられる、とても面白い映画でした。

ふらっと

たまに

心がとても平静なときに

ときどき

見渡す限りなにもない

灰色のコンクリートの台地を

歩いているような気分になる

体温とおなじ温度ほどの微風が

肌をなでていくが

熱くも冷たくもなく

ほとんどなにも感じない

コンクリートが溶けて

私の形を呑み込んでいく